Inner Circle

流れのままに

イェオ・シュウ・フーンがクチンでコーヒーや地元の料理を楽しみながらのんびりとした時間を過ごします

流れのままに
クチンに長年住む台湾出身の女性が地元のコーヒーや紅茶を出している。コーヒーはしっかりとした味わいで、一般的な口当たりの軽いものとは全然違う。

入国審査官がすまなそうに微笑んだ。「お待たせしてすみません。2機同時に到着したものですから。」ただし、列には3人しか並んでおらず、私は5分も待たされていなかったし、同時に到着した2機とも、エアーアジアのA320という小さな飛行機にすぎなかった。

しかし、ここは普通の街ではなく、クチンという、小さいけれど温かい心を持つ町なのだ。ここ数年、クチンを訪れる機会はなかったが、南国ボルネオの気持ちのいい空気を感じながらリラックスするには最高の場所だ。

私は入国審査官に言った。「大丈夫。時間はいくらでもあるのですから。」本当はクチンにいられる期間は3日間しかなかったが、ここでは時間の流れが独特だ。今回同行した友人は中国シャングリラ地方在住なのだが、彼女の地元も時間の流れがゆっくりとした静かな場所だ。

最近の調査によると、多くの人は実際に休日を過ごしているときよりも、休日の計画を立てているときのほうが喜びを感じているという。確かに、休日を心待ちにしているときは、期待と興奮で気分も高まっているが、現実に休暇を過ごすとなると意外とストレスの多い状況に遭遇したりするものである。なので、旅はあまり多くの計画を立てないほうが良いというのが私の持論であり、今回のクチンの計画は、流れにまかせる、というものだった。

初日は旧市街のショップを見て回ることにした。家族経営の自宅兼店舗が軒を並べる中で、私たちが一休みしようと立寄ったのがブラック・ビーンというカフェだった。クチンに長年住む台湾出身の女性が地元のコーヒーや紅茶を出している。テーブルや椅子は数えるほどしかなく、こぢんまりとした、しかし魅力的な空間だ。店は混んでいたが、店主は私たちにカウンター席を勧めてくれた。コーヒーはしっかりとした味わいで、一般的な口当たりの軽いものとは全然違う。おいしいクッキーをいただきながら、地元のコーヒーについてあれこれ伝授していただいた。

夜はシー・グッド・フード・センターでディナータイムだ。名前のとおり、この店には見た目にもおいしそうな料理が目白押しだ。私のお気に入りは、サラワク特産の山菜(シダの一種)の料理と蟹のカレー炒めだ。

さらに、かわいい小さなホテルを発見した。名前はバティック。館内で使用されているファブリックの風合いが素晴らしい。若い銀行家であるオーナーが「タノティ」というアートギャラリーも開いており、そこでは若い娘さんたちが地元の伝統的な布製品であるソンケット織りを学んでいる。ギャラリーで彼女たちと出会ったことで、私は、職を生み出し伝統を守り続けるうえで地元の起業家が果たす役割がいかに重要かを考えさせられることになった。

クチンにはこうした起業家がたくさんおり、皆、自分たちの伝統に誇りを感じている。サラワクの主要部族の料理を本格的に手がけるthe.Dyakでは、ほかでは出会ったことのない料理、しかもただひたすらにおいしい料理を堪能することができた。ここをオープンしたバーノン・ケディット氏は、今は亡きひいお祖母様に敬意を表して店を開いたと言い、彼女の写真が壁に飾られている。

この居心地のよいレストランでは、店のしつらえも見どころのひとつだ。たくさんの絵画をはじめ、花瓶や剣、ダヤック族の楽器といった装飾品など、それぞれが独自の興味深い来歴を持っている。この店はまるで美術館のような存在であり、ここで働くスタッフは一つ一つの物にまつわる歴史やうんちくを実にいとおしそうに披露してくれるのだった。もちろん、料理の味も忘れることができない。いずれまた、計画を立てないという計画のもとにクチンを訪れ、思いつくままに歩きまわり、単純にこの街を楽しみたいと考えている。

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